躍進し続ける若手きっての国際的ギャラリー。
オーナー蜷川敦子氏が貫くギャラリー運営におけるスタンスとは。
ギャラリーをオープンしてわずか数年で、世界有数のアートフェア「Art Basel」や「Frieze」へ出展、今年から始まる「Art Basel 香港」では、セレクション・コミッティーのメンバーに選ばれるなど、若手ギャラリーの中でも異例の快挙を成し遂げてきたTake Ninagawa。勢いのあるギャラリーとして今最も注目されている。きりりとした中にも関西人らしい気取らない人柄が印象的なオーナー蜷川敦子氏は、大 学で芸術学を学んでいた頃より、ギャラリストになることを決意していたという。
卒業後は、本場のアートシーンを学ぶべくニューヨークへ渡った。「ニュー ヨークのギャラリーで働いていた時に、展覧会を企画してみないかと声をかけられたんです。日本の作家を外に見せていきたかったので、以前から興味があった 関西の若手作家たちに声をかけ、初めてキュレーションを行いました。その展覧会が予想以上に反響を呼び、他のギャラリーからも企画のオファーを相次いでい ただきました。」
こうしてニューヨークで本格的なキャリアをスタートさせた蜷川氏は、日本に戻り、2008年には旧知の仲で同志でもあった竹崎和征氏とと もにTake Ninagawaを立ち上げる。蜷川と竹崎のダブルネームにした理由について蜷川氏はこう語る。「2つの名前を合わせて一つの名前であるかのようにするこ とで、一つのアイデンティティとしてギャラリーを発信していきたいと思いました。ギャラリー=私ではなく、自分のパーソナルアイデンティティはそこから切 り離したかった。」
ギャラリストの名を冠したギャラリーには、オーナーの趣味趣向が色濃く反映されるものだが、敢えて自身と切り離すことで、独自のスタン スを貫いている。
Take Ninagawaでは、若手作家から大御所作家まで現在13名の作家をリプレゼントする。ギャラリーにとって歴史をつくるというのは大事な仕事だと語る蜷 川氏。
オープンからわずか3回目の展覧会で個展が実現した大竹伸朗は、まさにそのような歴史的重要性を感じた作家の一人だという。「若手の作家と仕事をし ていく中で、彼らの仕事がどこから影響を受けているかを考えたとき、制作方法やそのスタンスにおいて大竹氏の影響力を強く感じました。」写真や立体、コ ラージュ、パフォーマンスと多彩な表現を展開し80年代から注目されてきた大竹伸朗。
その斬新性はいまだ追随を許さずトップを走り続けるアーティストであ る。しかし、開廊間もないギャラリーが、当時から一目置かれていた大物アーティストを説得するのは容易ではなかったはずだ。蜷川氏は、テーマを絞った3本 だての構成を提案し、展覧会のアイデアに興味を持った大竹は、開催を承諾してくれたという。
東京都現代美術館での大規模な回顧展「全景」以来となる大竹伸 朗の個展は大きな反響を呼び、大竹自身も予定していなかった新作を制作、新しい作品シリーズが誕生するきっかけともなった。アーティストとギャラリストの 意気のあったパワフルな展覧会により、Take Ninagawaはその方向性を強く打ち出すことに成功した。
ギャラリーの成長とともに、今後スペースを拡大していくのかと尋ねると、あくまで開廊当時のスタ ンスは変わらないという。「自由さを残しておくことで、真剣に美術と向き合える余裕を残し、その中で、歴史的に意義のある活動を続けていきたい。」どんな にギャラリーのプレステージが高まろうとも、型にはまらないスタンスで、常にフレッシュであり続けるギャラリーだ。
大竹伸朗展 展示風景
Shinro Ohtake《貼: Shell&Occupy 3》2008
Installation view at Take Ninagawa Courtesy of the artist and Take Ninagawa Photo by Kei Okano
Take Ninagawa
www.takeninagawa.com
東京都港区東麻布 2–12–4 信栄ビル1F
T. 03–5571–5844